文字を“音”で伝えることの難しさ

tonapa2009-09-12

私の本名は珍名である。
姓はまぁ、既製印鑑が無い程度なのでさほど不便は感じないのだが、名はほとんど当て字に近い読みであり、予備知識無しに一発で正しく読めた人を見たことがない。
そんな珍名で特に苦労するのが、電話で名前の漢字を伝える方法。
「ヤマノボリの“山”にニッポンの“本”です」とかだと、音と字のイメージが合致するのですぐに伝わるのだけれど、音と字のイメージがかけ離れている場合はこれがなかなか難しい。十分かりやすく伝えたつもりでも、なかなか相手が納得してくれないのだ。


大阪の難読地名を使って例を挙げてみると、こんな感じ。


ホウボクのホウデイリグチのデルと書いて、ハナテン*1


ワタクシのシイチバのイチと書いて、“キサイチ”*2


サンズイのカワツチヘンのホルクチビルのクチで、“コボレグチ”*3


・・・個々の漢字はイメージできても、最後の読みを伝えられた時点で「ええぇ? これで本当に合ってるのか?」という気分になると思う。
私の場合も電話で名前を伝えるたびに、いちいち「???」っぽい沈黙をされてしまう。とりあえずは「それで○○と読むんですよ。珍しいでしょ?」と自己フォローを入れるようにはしているのだが、毎度この調子だと、正直メンドウ臭いしあまりいい気分もしない*4


一方、一般的な姓で読み方も簡単なのに、やはり電話口で漢字を伝えるのに苦労している人もいる。
たとえば知人のタブチ氏。“ブチ”の字が「淵」と「渕」、どちらであるかを伝えるのに、いつも苦労されている。彼の場合、正解は「淵」の方なのだが・・・以前は「野球のタブチ選手と同じ字です」で通じたそうだが、今となっては流石に×。そりゃ田淵幸一の現役引退から、かれこれもう25年だもんな。特に若い世代の人たちには、これで通じる方が不自然だ。
で、困った挙げ句に編み出したのが、「ナガブチツヨシのブチじゃない、カクカクしている方の漢字です」という伝達法。う〜ん、苦しい。苦しいけど、何とか伝わる、か、な?


他、“渡辺”“渡邊”“渡邉”で毎回、三択問題になっちゃうワタナベさんとか、“難しい方のサクラです”と言ってギョッとされちゃう櫻井さんとか、簡単な読みであるにもかかわらず、苦労している人は多いみたい。
同音異字・同音異義語の多い日本語って、こういう時に大変だぁね。


ちなみに表音文字の代表格たる、英語の場合、綴りを伝えるにはこんな方法がある。

読みづらいアドレス、例えば、"akslpe@XXXXX.com"だと、エーケイエスエル……と英文字を1つずつ読み上げていかなければならない。やはり、聞き間違いやすい。英語を日常的に使う人たちも同じだ。そこで彼らはスペリング・アルファベットを使う。基本は簡単だ。


スペリング・アルファベット(spelling alphabet)は、英文字を誤解なく伝えるための工夫で、英語圏では昔から使われてきた。"aks"という綴りなら、"a for apple, k for king, s for star"というように、誰でも知っている基本的単語の頭文字として、"for"を挟んで表現する。


"p"、"t"、"e"のように聞き間違えしやすい英文字でも、"p for pizza, t for toy, e for elephant"と伝えれば区別しやすい。ドレミの歌の「ドはドーナツのド、レはレモンのレ、ミはみんなのミ……」というのに似ている。


(太線強調は引用者による)



やってる事は日本語の場合と同じだけど、文字数が少ない分だけ簡単ではある。
あと、軍オタ同士だと英文は、NATO式のフォネティック・コードですんなり通じてしまう*5ことも。例えば“Tonapa”の場合、「タンゴ、オスカー、ノーヴェンバー、アルファ、パパ、アルファ」とかね。
これが使えると物凄く便利なのだが、話している内容が「いかにもオタク」っぽくなってしまうのが欠点か。


あー、なんか取り留めのない話になっちゃったけど、文字を“音”で相手に伝えようとするのって簡単なようで意外と難しいよなぁ。
皆さんも電話で名前のやりとりをする時、苦労した経験、ありません?


おまけ:漢字説明ジェネレータ
http://seoi.net/kanji/

*1:大阪市城東区の地名。漢字では「放出」と書く。大阪の代表的な珍地名の一つで、よくクイズ番組のネタにされたりする。

*2:大阪府交野(かたの)市の地名。漢字では「私市」と書く。小学校の遠足で、ここにイチゴ狩りに行くのが北河内地区の定番。蛇足だが隣には枚方(ひらかた)市なる難読地名も。

*3:大阪市阿倍野区にある近畿日本鉄道南大阪線の駅名。厳密には駅名であって地名ではないが、漢字では「河堀口」と書く。知ってなけりゃ、まず読めない。

*4:その点で言えば、いわゆるDQNネームの子らも、なかなか大変な思いをしてるんだろうな。「ウツクシイ・ヒトで“ミント”です」なんて、電話口で絶対に凍り付かれるだろうし、対面なら間違いなく「“美人”と書いてミントさんですか。ははは・・・」と失笑されること請け合い。読みの難しさだけならまだマシだけど、そこに変な意味が籠もっちゃうと辛いよね。

*5:もっともひねくれたオタの場合、NATO式ではなく「エイブル、ベーカー、チャーリー・・・」と続く旧英軍式や「ドーラ、エミル、フリードリヒ、グスタフ・・・」なドイツ式を持ち出してきて、混乱に輪をかけてしまうケースもあるが。