スカイ・クロラ読了

森博嗣は『すべてがFになる』を読んで以来の二冊目。
淡々とした文体で虚無感たっぷりに紡がれて行くカンナミ達の日常が秀逸。この下地があってこそ、ラストシーンに強い感情的共感が生まれるのだと思う。
ああ、誰かが誰かを殺す理由のひとつって、案外そんなものかも知れないんだな。
知識や情報での理解でなく、感情面で納得して、胸にストンと納まってくる感じ。こればっかりは読んだ人にしか分からないかもね。


何度か挿入される空戦シーンも、なかなか丁寧で楽しめる。機動描写がやや薄めなので空中の位置関係が掴みにくいけど、カンナミの一人称視点で語られる物語だから、自分の目の前しか見えてなくてある意味当然か。残念だとは感じたけど、不満には思わなかった。


押井守がこれをアニメ化しようと決意した気持ちは、よく分かった。
毎度のテーマに対する類似性だけじゃなく、ある種の諦観から出発して、その延長線上に「生きる意義」を(真剣に、じゃなく、まるで他人事のような態度で)問うてみようとする(した)この物語は・・・なるほどオジサン世代としては、若者に見せてみたくなる内容である。
たぶん、見せられるほうは「ツマンネ」と迷惑顔をするだろうけど、ね。


シリーズのつづきは、第2巻『ナ・バ・テア』。ただし物語の時系列はこちらの方が過去になるらしい。家内がOKしてくれるなら、ぜひ続きも読んでみたい。


スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)